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前回のエントリの岩手での夏休み続き。今回は岩手県立美術館にも立ち寄ってみた。お目当ては現在やっている特別展「エルミタージュ美術館展」、ではなくて、常設展にある萬鉄五郎、松本俊介、舟越保武の作品と、この美術館の建物そのもの。以前、テレ東の「美の巨人たち」(ちななみにBSハイビジョンでの放映が終わってしまったのは残念)で萬の回と、松本の回を見て以来気になっていた。

出来たのは4年前とのことだが、建物中はまだ真新しく明るい。その中で特に印象的なのは公園に面した
グランドギャラリーとそこから展示室に昇る階段。緩やかなカーブになっている階段の上から、下を振り返ると不思議な静かな奥行きを感じる。この奥行きの余裕感が展示室に向かう前に爽やかな気分にさせてくれる。天気の良い日にこの空間を味わうだけでも来た甲斐がある感じがした。次は周りを雪に覆われた日に来てみたい。

常設展でメインの萬、松本、舟越は岩手を代表する画家、彫刻家であるが、萬は茅ヶ崎にて療養し、松本は代表作とも言える「Y市の橋」のモデルは横浜駅脇にある小川にかかっていた橋であるなど私が住む神奈川ともゆかりのある作家でもある。特に松本は自分と似たような生い立ち(首都圏->花巻->盛岡)をしているという点でも気になっていた。テレビに多少感化されたのかもしれないが、街と自然の2つの感覚をあわせ持つ感性の中から搾り出された作品に、自分も共感を感じているのだと思う。また、松本は、戦時にあり自由な作品に取り組みにくかった時代にも芸術家としての信念を曲げず道を模索し続けたと聞く。作品を見ながら、また今岐路に立っていると感じている自分の心を振るわされた。

地元の人からは馴染みが有り過ぎて「あえてなぜ常設展に?」といわれるかもしれないが、この美術館の3人のコレクションは非常に貴重だと思う。3人の生涯とその作品一つ一つやその変化を丹念に眺めることができ、作風の開拓や祈りのメッセージとともに人生や哲学を感じることが出来るからだ。そして、その空間をプロデュースしてくれる美術館全体がすばらしいものである。この美術館とコレクションを見るためだけに新幹線にのって盛岡に立ち寄る価値を感じる人もきっと多いだろう。